今回は、先日参加した夕学五十講のレポート
「グローバルリーダーのためのダイバシティ・マネジメント」と言うタイトルなので、あながちイントラコミュニケーションからズレてもいないだろう。講師は早稲田大学助教授の田中真美さん。

まず、グローバルリーダーシップとは何か?
これからは国と国、企業と企業が協力し合うようになる。よって、人々を共通のゴールに向かってドライブできる人材こそがグローバルリーダーシップという。

グローバルリーダーシップの失敗する要因として、ひとつのことに固執すること、もしくは逆に過剰適応することやパターン化してしまうことが挙げられていた。つまり最終的なゴールや目的に焦点をあて、やり方に固執しないことが大切だという。

つぎにダイバシティって何?
ダイバシティには表層的なものと深層的なものがあり、表層的ダイバシティは人種や容姿など、一目瞭然ですぐに影響を与えるもので、これは直接会わなくても影響を与えうるもの。一方、深層的ダイバシティは、考え方や振る舞いなどすぐに影響を与えるものではないもの。そして、これら二つが癒着した結果、偏見やステレオタイプを生む。

では、ダイバシティマネジメントとは、これらダイバシティを用いて、パフォーマンスを向上させることを目的としたマネジメント手法。ダイバシティマネジメントの競争優位性ということで

  • 人材獲得
  • 顧客市場へのアプローチ
  • コスト削減
  • 創造性(異なる価値)
  • 意思決定プロセスのクオリティ
  • システムのフレキシビリティ

を挙げておられた。また、これらがもっともビビッドに影響する部門として、経営、人事、マーケティングがあるという。

ダイバシティマネジメントのパフォーマンスという観点から、マイナスの主張として「まとまらない」「ミスコミュニケーション」「コンフリクト」があるという。たしかに同じ志向の人じゃないと、会議もまとまらないし、意識のズレから衝突が繰り返されるのは明白。しかし、プラスの主張である、「問題解決」「創造性」が発揮されないのも感覚的には理解できる。

ダイバシティマネジメントには次のようなパラダイムがあるという

  • 抵抗
    “違いの否定”
  • 同化
    “違いの無視”
    雇用機会均等法、防衛的
  • 分離
    “違いを認める”
    違いの価値化、適応的
  • 結合
    “違いを活かす”
    ダイバシティマネジメント、戦略的

グローバルマネジメントが困難になるにつれて、ダイバシティマネジメントの重要度は増しているという。グローバルリーダーシップは、パターンを取り除き、再構築するということが求められている。

以下、質疑応答などでフックしたもの

  • これまでのダイバシティ
    ほとんどが異文化コミュニケーションのトレーニングであったが、まずはステレオタイプの認識と再構築をするトレーニングが必要。
  • 健全なコンフリクト
    カルロス・ゴーンさんの言葉らしい。コンフリクトには、「タスクコンフリクト」と「アフェクティブコンフリクト」があるという。全社のタスクは健全で創造的なコンフリクト。後者は、感情的で日建設的なコンフリクト。衝突にも質があるというのは、当然といえば当然の話か。
  • 研修の評価方法
    研修にも評価の方法があり、有名なのが「カールパトリックモデル」というらしい。評価指標として、「研修をエンジョイしたか」「スキルは向上したか」「行動は変わったか」「パフォーマンスは向上したか」といったあたりらしい。人材育成ということで、数々の研修が企画されているが、その評価についてはイマイチされていないように思う。その結果、研修に参加することが、非生産的行為とみなされるような時もなきにしもあらず。

いかにドメスティックな企業であっても、グローバル化は避けて通れない。そもそもお客さまがグローバル化してしまうと、それに対応しないとビジネスができなくなってしまう。そういう環境対応へのアプローチとして、ダイバシティマネジメントというのは今まで、あまり意識できてなかったけど、非常に興味深い講演だった。