前回からの続き。

マクドの復活を支えた人材として、料理イノベーション担当ディレクターが紹介されている。ダン・クードローがその人。

4年間に6000種類の料理を試作し、その中から右の2製品(サウスウェスト・チキンサラダとチキン・スナック・ラップ) を含む10製品を実際に商品化させてきた。

10製品の後に6000回の試行錯誤。この試行錯誤から新結合=イノベーションが生まれている。マクドのシェフがいかに困難なものであるかを語るエピソードがいくつか紹介されている。

  • サラダにアップルスライスを加えただけで、マクドナルドは05年に世界最大のリンゴの買い手になった
  • サラダにブルーダイヤモンド社製のスライス状アーモンドの袋を添えたことで、同社の知名度は12%もアップした
  • サラダにエビやイチゴを加えるのはNG(全国展開させるだけの材料が揃わないため)
  • マクドがアボカドを仕入れれば、ほかの人々はアボカドを調達することができなくなる

そんな困難や制限を乗り越えて、商品化したものであってもメニューから消え、お蔵入りとなったアイディアはたくさんあるという。ただ、だからこそ「地球上で最も影響力のあるシェフ」と呼ばれることに、違和感はない。

そんなイノベータについての印象的なエピソードが二つ。

マクド入社に際しては、「料理の鉄人」のような審査を受けるらしい。そこで彼が提案したメニューについて、独創性が必ずしもずば抜けていたわけではなく

店舗スタッフでも作れて、かつ独創性を失わない商品を生み出せる

イノベーションは、イノベータの手元にあるだけではその真価は発揮できない。誰もがその成果を手に取ることができて、初めてイノベーション足りうるのだろうと思う。

さらに、彼は

ビッグマックのスペシャルソースのレシピを分子単位でというくらい細かく知っている。だが、それを変更するチャンスがあったとしても、原子1個さえ変える気はない

という。 自らの商品を分子レベルまで理解し把握していることを、果たしてどれほどの人ができているだろうか。(これは阪本師匠の問いかけでもあった)

プロフェッショナルとしての矜持を感じずにはいられない。

そして、「価格が安いから不景気に強い」というわけではないということがはっきりと分かる。やるべきことをやっているから強いのだ。

さらに、ここで「やるべき」「やらねば」を言うのは容易い。すっごい正論。つまり、ツマラナイ。

もう一歩、踏み込んで考えると、「どうありたいか?」という自問自答に対して、「こうありたいです!」と、ポジティブに答えることができるかどうかだと思う。

で、今日からすぐにできること。
それは、自分を分子レベルで理解すること。
そして、こうありたいです!と強く想い、宣言することだと思う。